中島。。

中島。。





あたしたちの前に並んでいた男は洞爺湖の中央に浮かぶ中島だった。


中島。


グレーのポロシャツに濃紺のスラックスというさえない格好。


それに、だ。


自分から出て行ったくせに喋ることと言えば洞爺湖の話ばかり。


あたしたちは中島を無視してエッチを続けた。





“鯨のアトラクションだね”


と中島は言った。





“洞爺湖なら
百匹くらいは余裕で飼えそうだなあ”




中島は呟いた。





“知らないわよ”


ゆうが中島に言った。




“君たちは仲良しだね。
いつもそうやってエッチをしているのかい?”



中島は靭性に乏しい微笑みを浮かべる。



“うん”

“あたしたちはすっごく仲良しでエッチが大好きだから”


ゆうが意地悪く答えた。



“君はよい匂いがするよね”


中島はそう言うとゆうの腋の下を嗅いだ。



ゆうは怒って胸のパッドポケットから塩を取り出すと中島の顔に叩きつけた。



中島は鈍感。




ゆうが怒っているのを気にもしないで、今度はあたしに話しかけてきた。




“君は妊娠しているのかい?”




中島があたしに言った。




“あんたに関係ないでしょ”




本気でムカついたから
あたしもパッドポケットの塩を全部中島の顔にぶつけた。




それでも中島はまったく気にしない。














何だかあたしは


こんな男とずっと一緒にいた洞爺湖のことがかわいそうに思えてきた。




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